恋に向いてない

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「オレ、恋ってしたことないんだよね。だから本当に好きな人とセックスするってのが、どういう感じなのか分かんない。でもさ、普通はすげぇ幸せなことなんだろ? だったら、こんなオレでよければどうぞって思うだけだよ」 「もしかして誰も好きになったことないとか? それ、お前の元カノの立場なくね?」  近くに座る男子連中にしか聞き取れないよう、タツヤは声を潜める。一紀はタツヤの気遣いを無にするように、構わず大きな声で答えた。 「付き合ってって言われたから付き合っただけだし」 「うわー、鬼だね」  何人かの一紀の元カノたちに視線が集まる。傷付けてしまったと思ったが、みんなが朝青竜をあんまりバカにするから、苛ついて言わなくていいことを言ってしまった。 「一紀ならホモに言い寄られてもやれるんじゃないの?」  一人の女子の声に、追従するような笑いが広がる。一紀を笑っても害された気分はどうにもならなかったらしく、彼女たちはつまらないからカラオケに行くと行って席を立ってしまった。 「悪いけど、一紀に幻滅して傷ついている女子をなぐさめないといけないからさ!」  タツヤはハイエナみたいな顔をして、いそいそと女子たちの後を追う。ほかの男どもも次々と席を立ち、結局一紀一人が部屋に残された。 「……お前らだって、まともな恋したことあんのかよ」     
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