恋に向いてない

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 一紀に抱かれて、ありがとうと言ってくれたあの子の純情が眩しく見えたなんて、あいつらにはどうせ理解できないだろう。くさくさした気分ごとビールを飲み干すと、誰かが作ってきた、カラフルなゼリーの山に手を伸ばした。  ジェロ・ショットというらしく、小さなカップにアルコール度数の高いゼリーが入っている。身体に悪そうなどぎついピンク色のゼリーを喉に流し込む。酔えるなら何でもいいとばかりに、やたらと口当たりの良いゼリーをもう一つ頬張った。  突然、廊下からのっそりと石津が現れて、思わず口中の柔らかな塊をぐいと飲み込んだ。 「あれ? みんな帰ったんだ?」  トイレにでもいたのか、置いていかれたらしい。女子たちにいつも引っ張りまわされていたから、石津が残っていたのは意外だった。 「カラオケだって。今行けばすぐに追いつけるよ」 「いいよ、興味ない」  石津は自分の飲んでいたグラスを持つと、一紀の隣に移ってきた。サークルに入って一年以上経つけれど、こんなふうに二人っきりで話すのは今日が初めてだ。正直、女子たちと一緒に行ってくれた方が気楽だったが、言えるわけもない。 「今ごろオレの悪口大会で盛り上がってるだろ」 「でも俺も意外だったな。一紀が断らない性格なのは知ってたけど、ああいうタイプの子にも優しくするとは思わなかった」 「喜んでたし、いいだろ」  「そういう優しさ、相手に酷だと思うけどね。下手に期待する分、辛くなる」     
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