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分かったような口ぶりに、石津がどんな恋愛をしているのかが気になった。
「石津って、誰か好きになったことあんの?」
「そりゃ人並みに」
「恋ってさ、どんなもの? 楽しい?」
「俺は両想いになったことがないから。ずっと片想いだし、苦しいよ」
「どんな風に?」
「相手の優しさに付け込んで一度でいいからヤらせてもらいたいとか、そんな情けないこと考えてる自分が嫌になる。絶望的なのに……どうしても諦められない」
見つめてくる視線が不機嫌そうに見えて、何か怒らすようなことを言っただろうかと一紀は首を傾げた。
「もしかして怒ってる?」
石津は呆れたように軽く笑った。
「お前恋に向いてないよ」
「何で? つか、話の流れが分かんないんだけど」
石津は大きくため息をつき、覚悟を決めたみたいに背筋をぴんと伸ばす。ただでさえ高い頭が一段と高くなり、一紀は石津の神妙な顔を見上げた。
「冗談とかじゃなくて、俺マジでお前のこと好きだから。この軟派なサークルに入ったのも、お前が目当てだったし、お前が付き合った女の子と仲良くしてたのはお前の話が聞きたかったから。バカみたいだろ?」
石津にキスするみたいに顔を寄せられ、一紀は声も出せずにのけ反った。あと数センチ迫って来られたら、床に倒れ込んでしまいそうだ。
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