あれから。

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それからどんどん月日は流れます… ゼノ君と水汲みをするうちに仲良くなったり、お母様が私の採取用の籠を編んでくださったり、お父様が私用のナイフを買ってきてくれてり… 他にも色々ありましたが、一番大変だったのはお母様から針を頂く事でした… この世界では針は高価な物、おいそれと子供に与える事はないようで、どんなにお願いしても下さいませんでした… どのように使うのか聞かれた時に、Jの字に曲げる…何て言ってしまったので尚更です。 その時の私のガッカリとしようったら無かったのでしょう…… どんな物が欲しかったのかお父様に聞かれたので、お答えするとなんと、木を削って作って下さったのです! 渡された釣り針には、針と言うには少し大きいですがシッカリと小さな穴が開き、Jの字を型どり、何と針の先端に返しまで付いていたのです!! その時は思わず、「 お父様大好き!将来はお父様と結婚したいです!」と言いながら抱きついて頬ずりし、頬にキスを致しました。 私とお父様の緩みきった顔に、お母様とザインお兄様も苦笑してらっしゃいましたが本当に嬉しかったのです! その日はお父様のお布団で一緒に寝てしまうくらいでした。 そんな日常を送っていたある日の事です。 「 お、そうだオリーゼ…隣のゼノが明日から森に行くみたいだから、一緒に行ってきても良いぞ。」 食事中にお父様がふと、そんな事を言い出しました。 ガタっ! 思わず立ち上がって目を見開きます。 ついに…ついにこの時が…!! 私が目をキラキラとさせていると、お母様が困ったように笑います。 「 ずっと行きたがっていたものね…。ザイン、ちゃんとオリーゼの事見てるのよ?オリーゼもザインの言う事はちゃんと聞くように、いいわね?」 「 はい!!」 ブンブンと首を立てに振ると、ザインお兄様に向き直ります。 「 ザインお兄様…!明日からよろしくお願い致します!」 「 うん、良かったね!」 ザインお兄様に頷き、早速釣竿のセッティングを始めます。 そして、組立て終わった竿をチェックしていると家族が苦笑します。 …誰もこの竿で魚が取れると思ってないのは知っていますけど、私はもう止められません!
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