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「 うふふ、やりました!見てください向さ…」
思わず独り言を言ってしまいました。
私は 跳ねるお魚の針を外すべく近寄ります。
このお魚は…鯉にソックリですね…
ただ、ウロコの縁が真っ赤で日本の鯉よりだいぶ派手で、鯉のぼりを連想してしまいますけど。
針を外して、鯉モドキを予め葉を敷き詰めてある籠に入れます。
それにしても、いけませんね…
転生してから五年近く経つのに、未だに向坂の影を探してしまう事があります…
向坂は私の3つ歳上で、5歳の頃からお世話になっていました。
家の筆頭使用人の息子で、家に来たばかりの頃は少し不満そうにしていましたが、徐々に態度は入和になり、メキメキと仕事を覚えて立派になりました。
ほとんどをベッドの上で過ごして、更に少しの事で体調を崩す扱いにくい私の面倒を嫌な顔一つせずにこなしてくれた事を今でも感謝しています。
向坂が学校から帰ってくる途中に、世間で流行っているぬいぐるみやアクセサリー、お菓子を買ってきてくれたのも凄く嬉しかったのです。
そんな向坂だからこそ、私の死に際に手を握ろうとした両親を押しのけて私の手を握っても文句を言われ無かったのでしょう。
「 お嬢さまぁああ!」
と叫びながら、ブワッと涙を溢れさせた悲しそうな顔が、私がみた前世での最後の記憶です。
あぁ…会いたいです向坂…
今、1人でこんなに大きなお魚が釣れるようになったのですよ。
ツーンとして来た涙腺を揉んでから、気を取り直してトゥルナを捕獲します。
さぁ、釣りまくりますよ…!
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