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黒目がちの大きな瞳をキラキラ輝いている。色白の肌は、漆黒の澄んだ瞳を際立たせる。桃色の小さくふっくらした唇はマシュマロのように美味しそうだ。漆黒の艶髪は、見事にストレートで腰の辺りで切り揃えられている。
ツバの広い麦わら帽子は彼女の彫りの深い顔立ちに影を落とし、取り分け長い睫毛を殊更長く演出していた。
無理も無い。
本来はこのような場所に出向く事すら許されない、やんごとなき深窓のご令嬢なのだ。普段は着物姿で過ごす事が多い。
小柄で華奢な我が主人の、並外れた可愛らしさに惚れ惚れしつつ、真壁は少しだけ過去を振り返った。
今日は高梨家ご令嬢、園子の15歳の誕生日。
「今年の誕生日はプレゼントもいらない。パーティーもいらない。だから藤が丘学園高等部の文化祭に行かせて!」
園子嬢はご両親に必死におねだりし、「一日だけ、終日、真壁と共に行動する事」を条件に漸く勝ち取ったプレゼントなのだ。
何故、藤が丘学園高等部の文化祭に拘ったのか?
それは今から三ヶ月ほど前に遡る。
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