第二話 出会い

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「あの人が、忘れられない……」  以来、園子は彼の姿が目に、その声が耳に焼き付き寝ても覚めても彼の事一色になってしまった。 食事も喉を通らず、夜も熟睡出来ない。元々華奢なお嬢の体は、益々細くなるばかり。  愛する愛娘が何か病に罹ったのでは?と心配した両親は、真壁を呼んで原因を追求させる。 「恋患い、てヤツか」  娘の成長を喜ぶ半面、初恋は庶民に惹かれてしまったというやるせない想いに、複雑な心境の高梨夫妻。  だが、可愛い愛娘の為だ。娘の思い人がどこの誰で、何をしている人か? 調べるよう真壁に命じたのだった。  そこで判明した彼が、藤が丘学園高等部二年、西村貫(にしむらとおる)舞台俳優を目指す。彼女、想い人無し。真面目で誠実、情熱家。成績は上位クラス。統率力あり。学園では人気のある方。約三ヶ月後の文化祭で、舞台初主演を努める。  という姿だった。それを知った園子は、ちょうど自分の誕生日に当たる日に、プレゼントとして藤が丘学園高等部文化祭に行く事をねだったのだった。  その日の為に、ワンピースを新調し、履き慣れないサンダルを部屋で履いて歩く練習までしたのだ。  そんな経緯があり、現在に至る。  真壁はすぐに現実に返った。 学園内は続々と人がやってくる。既に入り口からごった返していた。
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