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 一人でいくら考えたところで答えなど出るわけはない。問いつめてみよう。決心したのはいいのだが、授業が終わると町田さんはあたしの視線を避けるようにすぐさま美術室を出て行ってしまった。あまりにもあからさまな態度だったので、自分が何かただならぬ気配を発しているのかと心配になり、トイレで鏡をのぞいてみる。大きな異常はないが、目のまわりがかすかに腫れぼったくなっている。テスト前とか、何かに根をつめたときによくこういう顔になる。何を必死になっているのだろう。鏡を見ながらつとめて穏やかな表情をつくろうとしていると、トイレのドアが開いた。ノブに手をかけたまま静止している町田さんと鏡越しに視線があった。笑いかけようとするまもなく、ドアは閉じられ町田さんの姿は消えていた。
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