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 その日の帰りも由香といっしょだった。「りんさん」についてはまるでなかったことのようにふれることはなく、もっぱら彼氏とテーマパークに行った話で終わった。コンビニのバイトの日らしく、光峰駅でそのまま乗りかえて帰って行った。しばらく一人で電車を待っていたが、ふと思い立って、ホームの端の階段を上り、改札口を出た。  光峰駅は、大きな繁華街があるので、クラスの子たちの格好の寄り道ルートになっている。あたしが改札を出るのは、本屋さんか映画館に行くときだけだ。「りんさん」は、「光峰駅のカフェや本屋さんでよく目撃される」らしい。ひとまず、ショッピングモールの行きつけの本屋さんへ行ってみることにする。  本屋さんはかなり広い。まず雑誌コーナーへ向かった。発売されたばかりの映画雑誌をチェックするためだ。いつも内容を見てから、買うかどうかを決める。本当を言えば、昨日、自宅近くの本屋さんでチェック済で、今月は買わない方向に傾きかけていた。なのに、また見に行ったのは、わざわざ「りんさん」のために来たのではないということを自分に納得させるためだ。あたしは、もう一度映画雑誌を見るために来たのだ。「りんさん」はあくまで、ついで。  映画雑誌のページをゆっくりと繰りながら、視界を誰かが横切るたびにそちらに意識がむけられてしまい、あわてて誌面に注意を戻すということをくり返した。最終ページまでチェックを終え、結局今月号は買わないで図書館で読むという結論に落ちついた。  映画雑誌を棚に戻して、店内を見渡した。平日の夕方の書店は混みあっているというほどではないが、そこそこの人出だ。少し考えて、文芸書のコーナーに向かう。「りんさん」が出没するのは「本屋さん」という情報しかないので、ただのあてずっぽうだ。いつも自分が立ち寄るコーナーなので足がむきやすかったこともある。
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