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 本屋さんを出たところで、どっと全身の力が抜けて、エスカレーター脇のベンチに座りこんだ。袋から雑誌を取り出すと、派手な原色の服に身を包んだ金髪の女の子二人が満面の笑みを浮かべている。その表紙に見覚えがあった。由香のかばんにいつも入っている雑誌だ。急に腹がたってきて、近くのゴミ箱に雑誌を力いっぱい投げ捨てて立ち上がる。いったい、何をしているのだろう。どうでもいい噂話のために、わざわざ途中下車までして、欲しくもないファッション誌を七百円も出して買うはめになった。エスカレーターに乗ったが、あと二百円たせば、映画雑誌が買えたことが頭に浮かびじっと立っていられず、足早に駆けおりた。なんで「りんさん」にそんなにこだわっているのだろう。「りんさん」のために時間とお金を無駄にしてしまったことが、一緒にいないときまで由香に支配されているように思えて気持ちが沈むばかりだった。  ショッピングモールを出て、駅に向かいかけたところで足がとまった。このまま電車に乗って帰ってしまえば、わざわざ七百円損するためだけに途中下車したということになる。それがどうしても許せなかった。何を探すわけでもなく、あたりを見回してみる。ショッピングモールの向かいに最近オープンしたのか、見覚えのないカフェが目に入る。あたしは、一人でカフェに入ったことがない。必ず両親かおねえちゃんが一緒だ。友達とすら一緒に入ったことがない。だから、一人でカフェに入れば、人生で初めての経験をしたことになり、途中下車したことが無駄でなくなる。そう自分を納得させて、カフェに向かう。カウンターでアイスコーヒーを注文して、トレーを持って空席を探していると、同じ制服のグループが目に入ったので反射的に方向転換して二階席への階段を上った。
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