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悔しさと怒りで頭がこんがらがってきたその時、東雲さんがふっと顔を寄せた。
「そうだね、すぐに持ってきたのは偉いよ。褒めてあげたい。でもさあ・・」
「な・・なんですか」
すぐに耳元に息づかいを感じ、それが昨日のキスを思い出させる。
ちょっと、なにドキッとしてんの私。
こんな犯罪まがいの事されてるのに、色気すら感じる目つきに惑わされたら――・・
「小見。俺も読者も馬鹿じゃねえんだよ」
駄目だと自分に言い聞かせるまでもなかった。
初めて聞く、ドスの利いた低い声に、瞬時に身体が強張る。
東雲さんが発する威圧感は、昨日の真野さんの比じゃなかった。
のらりくらりした態度から一変したせいもあるけど、見限るタイプの真野さんと違い、わからせるまで追い詰める――そんな恐怖を感じた。
ごめんなさい?私が悪かった?
謝罪の言葉を並べてどうするんだろう、どうあがいたって結果は変わらない気がする。
2日連続で上長たちを怒らせるなんて本当にクビになるかもしれない。
いや、そんな心配より、今この瞬間が怖い。
「あっ、ちょ・・っ」
嫌な予感は的中し、東雲さんは少し強引に、それでも器用に素早くボタンを外した。
触れるか触れないかの位置で遊んでいたローターが、思いきり膨らみに押し付けられる。
ブラの上からでも十分に感じる振動に、反射的に肩が跳ねた。
「取説で上手く逃げたつもりだろうがな、バレバレなんだよ。浅はかな真似しやがって。
予告編だけみて書いた映画の感想が観るかどうか迷ってる奴の役に立つと思うか?始まりはどうだったか途中でどんくらい山場があったか」
「っ、やだ」
「ネタバレギリギリのとこまで教えないと、足運ぶ気にならねえだろ」
何故か映画批評に例えながら、東雲さんは空いた方の手で私が動けないように腰を抱え、ブラの縁をなぞるようにローターを滑らせていく。
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