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「東雲さん、例のレビューしあげてきました。確認してください」
次の日、出社するなりレビューと共にローターをつき返してやった。
今の私は傍から見たら完全なドヤ顔に違いない。でも後悔はしない。
惜しむらくは、他の三人が取材やらなんやらで午前中は不在だということくらい。
まあいいか、一番ひれ伏せたいのはこの人だし。
ここで素直に謝れば昨日の犯罪も許してあげよう。
「へー・・総合評価68点か。結構厳しい目で見たね」
「客観的に判断しましたから。最初は充電式なのが手軽で良いと思ったんですけど、完了するまで使用できないのがちょっと。
3時間と言いつつ、いろいろ試してたらすぐに切れちゃいましたし・・マイナス点はそこですね」
「ほうほう。いいねえ、そういう意見重要だよ」
ふふっ・・メリットデメリットを並べた方が女性には説得力がある、ここがポイントなのだ。
東雲さんもわかってくれたみたいで良かった、ともはや上目線で見ていると、不意にローターを手のひらに乗せられた。
「これはもう小見さんのだよ」
「えっ・・別にいらないんですけど」
「次はこの分析を踏まえたうえで、実践してみないと」
はっ、と気づいた時には手遅れだった。
メガネの向こうの瞳は全然笑ってない。
やばいと身を引くより早く、東雲さんの腕が伸び、腰に回って引き寄せられる。
あっという間に身体がくっつき、東雲さんの胸元に私の頭が当たった。
「ちょっと、やめてください」
そんなに力を込めてるようでもないのに、必死にもがいても身体は離れず、東雲さんは平然としている。
これじゃ昨日の二の舞になる。
いや、状況からしても、危険度レベルは振り切っている。
後ろ手にカタカタと聞こえる音が、余計に恐怖を倍増させた。
今の、蓋を開けて何かを取り出したっぽいんだけど、まさか・・そこまでしないよね!?
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