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慌てて顔を上げようとした時、身体の割に細めの指先が私の髪を掬いふわっと耳にかけられる。
優しい感触にドキッと心臓が鳴ったのもつかの間、すぐ近くを虫が飛び交ったような、痺れを伴う振動音が聞こえ始めた。
「やっ・・」
咄嗟に手をかざして、視界に入る忌々しいピンクの物体を振り払っても、耳の中にはまだ感覚が残っている。
認めたくないけど、私今、これを刺激と捉えた。
つまり、感じてしまった。
それをわかっているのか、東雲さんが飄々とした顔でローターを揺らす。
「耳くらいなら、弱のがいいね。強だと痛いかもよ」
「きゃっ、やめてくださいってば!何するんですか!?」
ローターの先を耳たぶにぐいぐいと押し付けられ、今度は快感よりも鼓膜を震わすような痛みが走る。
無遠慮な扱いに顔を背けて逃れたその時、東雲さんが私を押さえたまま身体をかがめた。
不意に足が浮いたかと思うと、一気に腰元を抱えられ、机の上に座らせる。
焦る私の身体を制すように真正面に東雲さんが立ちはだかり、逃げ道すら閉ざされたことを悟った。
壁ドンならぬ机ドン・・なんて悠長にしてる場合じゃない。
音を立てながら、宙で揺れるローターが私には凶器に思える。
あっさりした顔で近づけてくるあたりが、無差別な通り魔そのもので、いよいよもって危機を感じた。
「東雲さん!冗談ですよね?今ならまだ許せますから、離して下さい」
「レビューは冗談じゃできないでしょ。その気になってもらわないと・・身体もちゃんと準備して」
「なっ」
震えたままのローターを胸元に押し付け、一気にボタンの隙間から中に飛び込ませる。
あまりに有り得ない展開に、なんて手慣れてるんだと場違いな感想さえ湧きそうだった。
けれどすぐに我に返って、東雲さんの腕を必死に叩く。
「東雲さんっやめてってば!」
「んじゃここで一人で出来る?なら止めてやる」
「平然と何言ってるんですか!大体、レビューならもうしてきたじゃないですか、なんでこんなこと・・っ」
散々人を焚き付けたくせに、いざ提出したらこんな目に合わされるなんて。
やっぱり理由つけて、自分たちの欲を晴らしたいだけじゃないの・・
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