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 トーヤのオリジナル、大天才と称えられたロボット工学博士は免疫不全の病を抱えていて、二十体のクローン体のうち、まともに成長したのは十八番目のトーヤだけだった。  他の兄弟たちがどうなったのかトーヤは知らない。  おそらくこの世に生を受けず消えてしまったであろうことは想像に難くない。  ドームの人間たちはこれを破棄という。  破棄されなかったトーヤは子宮カプセルから出てまだ二年足らずだ。  人間年齢に換算すると十七歳になる。  免疫不全を克服した健康体だ。  頭脳はオリジナル同様、またはそれ以上と期待されている。  ロボット工学はこれからのドーム存続、地上への進出、拡大のためには欠かせない。  異常宇宙線に耐え、希薄な空気の中でも効率よく作業でき、主人の命令には絶対服従。  失ってもすぐに取り換えの出来る便利な機械。  オリジナルの博士は数百年も前に、最も優れたロボットを造り上げたのだという。  トーヤに求められているものはそれだ。いや、管理官はそれ以上を求めている。
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