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「さすがにあの博士のクローンですね。大層なご活躍だ」
白衣の人物が初めて口を開いた。
銀縁の眼鏡の奥の瞳が冷たく光る。科学者だろうか。
初めて会う人物だ。
トーヤが会うことのできる人間は管理官と、身体管理をする医療チームの数名に限られる。
二年間ずっとそうだった。
そして外からは開けられても中からは開けられない、オートロックの研究室にずっと閉じ込められている。
「それはどうも」
当たり障りのない返答を返す。
眼鏡の科学者らしき白衣の男は冷たく笑った。
「我々は博士のお力をぜひともお借りしたい」
今度は博士ときた。さっきは博士のクローンと呼んだのに。
「なんでしょう?」
「調べていただきたいケースがあるのです」
「はい?」
「我々は、脳の一部をコンピューターで代用する研究をしている機関です。人工知能とは異なるやり方でね。電脳化と表現するとわかり易いでしょうか」
「電脳化については理解しています」
もともとは、失われてしまった脳の機能を補完するために発達した技術だ。生体脳を補完するだけなので、コンピューターそのものには理解力や判断力を必要としない。その点が人工知能とは異なる。
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