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「それなら話は早い。実は、ある古いロボットの記憶チップを実験体の脳に移植してみたのですが、これがうまくいかない」 「うまくいかない、とは?」 「目覚めないのですよ。叩いても抓ってもね。それだけじゃない、電流も流してみましたし、体に傷もつけてみたのですがね」  男は口の端を上げて笑った。  なんてひどいことを……。  という言葉をトーヤは飲み込んだ。  実験体とは、生殖コントロールの名の下に人工授精で大量に生み出される人間たちだ。  彼らは奴隷として、モルモットとして使用される。  こうした非人道的なことがドームの中ではまかり通る。すべては一部の、生き残りの人類のためだけに。  そしてそれはトーヤにも当てはまる。  クローンなどいくらでも造ることが出来るからだ。 「私に……、どうにかしろということですか?」 「そうなります。我々はあなたの頭脳が必要なのです」  ちらりと管理官を見る。無表情に口を一文字に結んでいる。  どうやら上で話はまとまっているらしい。中央が決めたことならトーヤにNOの選択肢はない。断れば待っているのは死、いや破棄だ。 「わかりました」
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