7/15
前へ
/64ページ
次へ
「では、今すぐ実験体のところへご案内しましょう」  初めて出る研究室の外。  白く明るい廊下をどこまでも歩いた。  ブロック表示も見当たらない。歩いているうちに軽いめまいを覚えた。  いったいどこへ、どこまで歩けばいいんだ。 「さあ博士、こちらです」  通されたのは、さっきまでいた研究室と寸分違わぬ部屋だった。  違うのは目の前で仕切られたガラスの向こうに、もうひとつ部屋があることだ。 「あちらはクリーンルームになっています」  密閉されたクリーンルームの中央のベッドに実験体の青年は横たわっていた。  体中に管を這わせている。  特に頭部には何本もの電極が張り巡らされ痛々しい。  年齢は二十歳に足りないくらい、もしかしたらトーヤと同い年くらいかも知れない。  長い手足、肌の色は黄褐色、髪は黒い。  過酷な労働のせいなのか細身なのに筋肉がしっかりとついている。  トーヤは自分の白い肌と見比べた。  眠っている彼の方が健康そうに見える。 「これは東洋系です。身体は柔軟だし肌も丈夫。健康で使い易いのですよ」  眼鏡の科学者(彼の名前はムナカヌと言った)の言葉を軽く聞き流し、トーヤは青年をじっと見つめた。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加