epi.3

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全体的な写真も撮っておこうかな、とスタッフさんの顔が映らない角度を探して歩くと、今度は今次さんが目を丸くしていた。 どうせ怪しいとか思ってるんだろう。 気になったものを写真に残すのは路地裏時代からの習性なんだからしかたないでしょうが。 「小雪ちゃん盗撮上手そう!」 全く嬉しくない言葉を聞き流しながら、出入り口の方までもスマホを向ける。 と、不意に画面上を誰かが横ぎったかと思うと、すぐに戻ってきてピースをしてきた。 「え?」 かしゃっという音とともに、ぶれた腕と指先が映る。 白のYシャツを辿って視線を上げると、そこにはマスク姿の見知らぬ男性がいた。 まだピースサインをしたまま、目元に笑みをたたえている。 「えっと・・」 この場にいるということは関係者なのは間違いなく、誰ですか、なんて失礼な返答は出来ない。 こっちも曖昧に笑って会釈をすると、後ろから「タイチ」と呼びかける今次さんの声が響いた。 「今来たの?」 「うん。午前は取材入ってたから。もう愛実ちゃん準備終ったのかな」 マスク越しに聞こえる声に、一瞬ドキッとする。 物凄く穏やかな話し方だ。アナウンサー・・いや、あれだ、お客様相談室。 心の尖りを削ってくれそうな優しい声音に何も言えないでいると、タイチさんと呼ばれたその人がマスクを外す。 現れた素顔も息を飲むほどイケメンで二重の驚きを覚えた。ハーフと見紛うくらいスッキリした目鼻立ちをしている。 数日前にアンハトのメンバーをレベルが高いと称したけど、申し訳ないが結構な差をつけてタイチさんに軍配があがった。 「彼女は?」 「アンハト初女子ライターの小雪ちゃん。キワドイレビューもお手の物」 「余計なこと言わないでくださいよ!始めまして、小見小雪です。未熟で至らないところもありますがよろしくお願い致します」
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