epi.3

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2人がソファーに並び、紅茶を飲んでいるところから、撮影が始まった。 「お砂糖入れ過ぎちゃった」 うーん、と首を傾げた愛実さんがカップを置く。 入れ直せば?とききながら、その紅茶を口に含み、「うわ、あまっ」と笑うタイチさん。 ありがちな光景だ。顔をしかめるタイチさんも、それを見て笑う愛実さんも可愛い。 なんてことないカップルの日常と言う感じ。 甘い雰囲気のままもつれ込んでいくのだろうかと思った時、愛実さんがじっとタイチさんを見つめた。 「どうした?」 「お茶も上手く入れらんないんだなと思って」 ふう、と目を伏せて息を吐き、勢いよくタイチさんの腕に向かって倒れ込む。 それを難なく支え、舞った愛実さんの髪を撫でつけた。 「今日は何?お使いで忘れ物?それとも違う資料何百部コピーしちゃった?」 「もー前の事は忘れてよぉ・・会議の日にち変更になったこと、間違えて部長に伝えちゃったのっ!朝1人でシカゴ行ったって」 えーそんなレベルの高い間違いする!?部長もちゃんと確認しなよ!って、設定につっこんでどうする私。 ざわついた心を押さえて再び目を向けると、愛実さんはあの可愛い顔をアンニュイに曇らせ、本当に失敗をしでかしたように目を潤ませていく。 演技だとわかってても、男なら抱きしめたくなり、友達だったら全力で励まそうと思わせる表情。これはすごい。 対してタイチさんも、少し首を傾げて微笑んだ。 ふっと息を吹き出すような、肩の力が抜けた笑い方が自然で、ホッとする。 「はー・・もうクビかなあ」 「私が言うセリフでしょ!・・ホントになったらどうしよ」 バシッと腕を叩いた後、愛実さんは向きを変え子どもが甘えるみたいにタイチさんに擦り寄った。 するとタイチさんも細い身体に腕を回し、くすぐるように首元を撫でる。猫のゴロゴロみたい。 これはポイント高いな、と私自身も感心していると、タイチさんが目を細め、愛実さんの顔を上げさせた。
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