epi.3

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押し付けたとたんに舌が滑り込んで、飴でも舐めてたのか甘い味が口内に広がる。 ここで比べるのも随分余裕じゃないかと思うけど、東雲さんより激しく自分主体なキスだ。 その分動きは的確で、絡まる度にゾクッと震えが走る。 異動3日目にして、2人の男に襲われるってどうなのよ! 本当に訴えていいんじゃないか、でも高額な相談料を払う前に、自分でできることはやってみよう。 認めたくない快感で力の抜けた足をなんとか奮い立たせ、膝を曲げる。 覚悟を決めて、風を切りながら思いきり前に伸ばすと、今次さんが奇声を上げた。 「いっふぇべー!」 なかなか聞くことのない言語なのは、驚いて唇を離した際に舌を噛んだせいと見られる。 がばっと蹲り、口元と脛を押さえて悶絶している哀れな姿を見て、1%くらい許してもいいと思った。 「正当防衛ですからね、私は謝りませんよ」 「れも濡れてらじゃんか」 「なに決めつけてるんですか!」 触ってもないのに、と言いかけて慌てて口をつぐんだ。 この系統の男は、じゃあ確かめさせてと平気で言う。 脛に穴が開く恐怖もすぐに忘れてまた手を伸ばしてくるにきまってる。 「東雲さんと言い今次さんと言い、口を開けば変なことばっか。仕事熱心なのはわかりますけど、あまりしつこいと逆効果ですよ」 「逆効果?」 「ただの身体目当てみたい。控えた方が良いと思います」 真面目に仕事をしたくたって、毎回こんな方向に持って行かれたらやる気を損なわれてしまう。 せっかく現場事情が知れたんだから、良い気分のまま記事をまとめたいのに。 少しきつめに、声のトーンを下げて言うと、今次さんはきょとんとした顔で首を傾げた。
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