epi.3

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「なんでえ?その気にさせるのが、タイチたちの仕事なのに?」 全く含みのない、純粋に飛び出たような返事に、今度は私が動きを止める。 「え・・?」 「AVってそういうもんじゃん。一人で観ても二人でも、エロイ気分になって楽しい時間を過ごすために作られてんだし。 小雪ちゃん、考えてみてよ。めっちゃくちゃ美味い店に行って、美味い!って言うっしょ?作った人にそれ伝えたら喜んでくれるじゃん?」 「そ・・そうでしょうけど・・また話が」 「おんなじだよ~。皆、受け手のために本気でやってんだから!てわけで、俺は作品観て起ったらちゃんと言う!そうすると女優さんもすげえ喜んでくれる!そんで、俺らが感じた楽しさを記事にしてどんどん伝えてくんだ。 結果的には作り手も受け手も、あと俺も良い気分、最高でしょっ」 ウインクが決め手となったわけではないけど、私はもう黙っていた。 完全に敗北。 こんな笑顔の前ではぐうの音も出ないんですけど。 常にへらへらしかしない人だと思ったのに、完璧な理論を披露され、自分の中の評価が少し変わる。 ざっくり過ぎるとはいえ、今次さんの意見は全く間違ってない。 むしろ、料理人であれ制作であれ販売であれ・・対相手がいる職種であれば、誰しもが大きく頷く主張だ。 世間的には憚られる内容とはいえ、従事している人にとっては、今次さんのような言葉は何よりの励みになるだろう。 「その為には、自分に正直でいないとね~。てことで、小雪ちゃん!やろ」 ただ正直すぎる感想も、直結に至る行動もどうかと思いますけどね! 自分がどんなに満足したからって、ベクトルが違う相手にそれを押し付けたらただの嫌がらせなんだよ!
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