epi.3

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「愛実ちゃん、今からメイク?」 「ううん!もう終わったよ。今日はお泊りって言う設定だから、すっぴんなんだあ」 「えーマジ!シャワーシーンもある!?このカメラ超防水!」 「見てのお楽しみ~、小雪さんも楽しんでってくださいね!」 「は、はあ・・」 この感じから行くと、そうドギツイものではないのかな。 自分がやるわけじゃないのに、どこかホッとする反面、すごい軽いなとも思う。 別に嫌悪感とかじゃなく、愛実さんの表情が、本当に彼氏の家に行くみたいにキラキラとしていたから。 演技だと割り切ってるんだろうか、それにしては無邪気過ぎる。 今次さんのさり気ない撫でまわしにも動じないどころか、自分も指を這わせてるし。 まあ、どろどろした裏や悲壮感がないのはいいことだよね、と自分に言い聞かせ促されるままにスタジオに向かう。 中に入ると何人かのスタッフさんが準備に追われていて、ようやく男性の姿も目に入った。 かといってけっしてごった返してるわけでもなく、笑顔でそれぞれの仕事をこなしている。 和気あいあいなんて表現すらあうんじゃないか・・彼らの後ろに広がるセットも、一見、普通のマンションの一室と変わりない。 衝立を使用して壁紙を施し、出来た空間に家具や雑貨を配置してある。 白と黒に統一されたシンプルなものだけど、生活感を出すためか上着が無造作に放ってあったり、書類らしき束が折り重なったりと、サラリーマン彼氏の部屋という雰囲気はバッチリ出ている。 ドラマの1シーン、もしくは舞台のセットあたりが似つかわしい出来だ。 ここであの愛実さんがもろ肌を脱ぐ・・うーん、ある意味アート。 「このセットって写メしても平気ですか?」 自社スタジオで撮影と言うから、よくあるマットレスの上とかジメジメした地下室を想像してた。 この清潔感溢れるギャップって、なかなか印象高いかもしれないと思い今次さんに尋ねる。 「許可取ってるし、撮影本番中じゃなければ何撮っても大丈夫だよ。どこで撮る?ソファーの上が良いよね」 「あ、記念撮影は求めてませんから。資料として映したいだけです。ネクタイ外さなくていいです」 え~、とわざとらしく口を尖らせる今次さんを無視してスマホを向け、何枚か収めた。 拡大して照明や周りの機材をトリミングすれば、何の変哲もない彼氏の部屋だ。
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