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「愛実ちゃん、今からメイク?」
「ううん!もう終わったよ。今日はお泊りって言う設定だから、すっぴんなんだあ」
「えーマジ!シャワーシーンもある!?このカメラ超防水!」
「見てのお楽しみ~、小雪さんも楽しんでってくださいね!」
「は、はあ・・」
この感じから行くと、そうドギツイものではないのかな。
自分がやるわけじゃないのに、どこかホッとする反面、すごい軽いなとも思う。
別に嫌悪感とかじゃなく、愛実さんの表情が、本当に彼氏の家に行くみたいにキラキラとしていたから。
演技だと割り切ってるんだろうか、それにしては無邪気過ぎる。
今次さんのさり気ない撫でまわしにも動じないどころか、自分も指を這わせてるし。
まあ、どろどろした裏や悲壮感がないのはいいことだよね、と自分に言い聞かせ促されるままにスタジオに向かう。
中に入ると何人かのスタッフさんが準備に追われていて、ようやく男性の姿も目に入った。
かといってけっしてごった返してるわけでもなく、笑顔でそれぞれの仕事をこなしている。
和気あいあいなんて表現すらあうんじゃないか・・彼らの後ろに広がるセットも、一見、普通のマンションの一室と変わりない。
衝立を使用して壁紙を施し、出来た空間に家具や雑貨を配置してある。
白と黒に統一されたシンプルなものだけど、生活感を出すためか上着が無造作に放ってあったり、書類らしき束が折り重なったりと、サラリーマン彼氏の部屋という雰囲気はバッチリ出ている。
ドラマの1シーン、もしくは舞台のセットあたりが似つかわしい出来だ。
ここであの愛実さんがもろ肌を脱ぐ・・うーん、ある意味アート。
「このセットって写メしても平気ですか?」
自社スタジオで撮影と言うから、よくあるマットレスの上とかジメジメした地下室を想像してた。
この清潔感溢れるギャップって、なかなか印象高いかもしれないと思い今次さんに尋ねる。
「許可取ってるし、撮影本番中じゃなければ何撮っても大丈夫だよ。どこで撮る?ソファーの上が良いよね」
「あ、記念撮影は求めてませんから。資料として映したいだけです。ネクタイ外さなくていいです」
え~、とわざとらしく口を尖らせる今次さんを無視してスマホを向け、何枚か収めた。
拡大して照明や周りの機材をトリミングすれば、何の変哲もない彼氏の部屋だ。
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