月の間違い

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月の間違い

 年に一度、学校を上げて開催される文化祭を通じて、何かを変えよう。  そう表立って頑張る生徒は少ないかもしれない。  けど、心のどこか期待している生徒は多いのではないかと思う。  そういう下心がなくても、学年やクラスを超え、交流も普段よりは活発なることで、名前も知らなかった人に心動かされる、なんてこともあるだろう。  もしそれが恋というものであるならば、文化祭本番にそれを成就させようと考える人もいるかもしれない。  しかし、そういった人に、一つ私見を述べさせてもらうと、もし胸中の秘めたる思いを打ち明けるのであれば、文化祭の準備期間中――つまり前日までにしておくべきということだ。  文化祭が始まれば、生徒全員に持ち場が与えられ、一定時間そこに拘束される。  意中の人と見て回りたいなら、お互いがフリーになる時間を知っていることが最低条件になるのだ。  当日にはトラブルだって起こる。予定通りとはいかない。そこに父兄まで交えた混雑状況の中で、何の示し合せもなく男女の仲を縮められる。そんな機会に恵まれる人は、ごく一握りもいるかどうか。まさに運命とも言うべき力で惹かれ合わなければ不可能だ。  とにかく文化祭を年に一度のデートイベントにしたいのであれば、その前までに手を打っておくこと。  さもなくば俺のように、唯一予定の開いている同性のクラスメイトを、そいつの出物が終わるまで待っていることになる。
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