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提示された時間よりも早く作業を終わらせ、真野さんに声をかける。
随分早いなと驚いているけど、私の頭の中はもう、さっきの誘いでいっぱいだったのだ。
とにかく内容を知りたくて、稀に見ぬ集中力を発揮した結果である。
「すごいスピードで読みこんでたけど、し、四十八手興味あるの?」
はわ・・と顔を赤らめて窺う梶浦さんに全力で否定し、改めて真野さんに視線を向けた。
「あの、野暮用ってなんですか?」
「ああ。昼とったら・・いいや、食いながら話す。行こう」
「え?」
ちらっと時計を見た真野さんが素早く立ち上がり、私の返事も聞かずにコートを羽織り出す。
今日はお弁当持って来てるんだけど・・とは言えないな。
仕方なくついて行く準備をすると、真野さんは残る二人に向かって「昼過ぎ・・15時には戻る」と声をかけた。
えー、半日もかかるって何?取材とか?でも基本は今次さんが行くって・・
だんだん不安になりながら、さっさと歩いていく背中を追う。
出がけに、東雲さんが「1ラウンドで終わらせてね」と呟いたので、もちろん無視した。
階段を下りてロビーに出ると、ちょっと待ってて、と言って真野さんがどこかに電話をしだす。
聞き耳を立てるわけじゃないけど「一階で待ってます」とか「詳細はまだ・・」なんて声が気になる。
まだ誰か来るんだろうか?一階ってことは、ここの社員?
けれど通話が終わっても、真野さんが内容を切り出す気配がないので、私も黙って待っていた。
「ふー・・」
珍しい、真野さんのため息。
しかも疲れてるとか息抜きじゃなく、なんか緊張してるっぽい。
落ち着かなそうにポケットに手を入れてるのを見て、こんな顔もするんだと意外に思った。
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