文化祭を五倍（当人比）楽しむ方法

１ 入門編

　文化祭という言葉を聞いて、人はどういう反応を示すだろうか。
　クラスメイトと一緒に徹夜で仕上げた展示物、寝食を忘れて練習に明け暮れた演劇、仕入れから売り子まで全てが新鮮だった模擬店、中にはバンドやダンスでステージに立った者や、絵画や造形物を出展した者もいるかもしれないし、実行委員として運営に携わった者だっているだろう。
　それらの思い出が映画のように脳裏へ描き出され、思わず眼を輝かせてしまう人が大多数だろうと思う。

　そうして少数の人は眼が曇っていく。
　クラス内に友達は一人もおらず、出し物にも殆ど関わることはなく、かといって趣味もないから一人では何もできず、通常なら自分専用の隠れ場所である体育館の裏にも先客がいたので、仕方なく校舎内を一人でうろついていると、ちゃんと制服を着ていたにも関わらず他校の生徒に間違えられた上、しかもその教師は自分の担任だったという経験等が、走馬灯のように脳裏へ蘇ってきてしまうのである。