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文化祭がやってきた。
いつものことながら、俺と吉村は、厄介ごとを押し付けられた。
クラスの出し物のクイズ番組で司会とアシスタントだ。
「吉村、台本書いてきたから目を通しておいて。」
俺は、進行の台本まで書く羽目になっていた。
「西野君、こういうのは、卒なくこなすよね。」吉村は、台本をパラパラめくりながら、言う。
一年の時、一緒にクラス委員をやってから、行事の度に俺たちは、クラスのみんなから推薦されて、まとめ役だの厄介な事を押し付けられていた。
「吉村、明日の放課後時間ある?少しリハーサルしよう。」
「いいよ、セットを作るのは、みんなでやってもらってさ。リハーサルしよう。毎度、毎度、勘弁してほしいよね。」
「そうだな。」
と、言いつつ俺は、楽しんでやっていた。
吉村と組んでなにかやるのは、楽しい。
「本当、西野君とじゃないと、やらないよ。なんだかんだ、言って、頼りになるもんね。」
「褒めの言葉として、受け取っておくよ。」
「褒めているのよ。喜んで。」
ブツブツいいながら、ちゃんとやる事は、やるんだ、吉村は。
通し稽古を終えて、明日は本番。
「良いじゃない。」
「流石!」
クラスメイトは、無責任に囃し立てる。
「人の気も知らないで。」
吉村は、フンと鼻をならす。
「まあまあ、今回の文化祭でこの手の仕事は、最後だろうから。」
俺が言うと、吉村の表情が曇った。
「そうか、最後か。そう思うと寂しいね。」
「俺たちが、組んで仕事するのも最後だな。まあ、楽しんで行こう。」
「基本、西野君と仕事をするのは、楽しいけどね。ただ、他のクラスのみんなが、お気楽で腹立つのよね。」
ブツブツ言う割に、楽しんでいるんだな、吉村は。
クイズ番組は、それなりに盛り上がった。
全てを、終えてクラスのみんなで、ジュースで乾杯した。
吉村が、俺の所に来て、手を差し出した。
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