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「俊……俊……わたしだけの俊……」
姉さんの声はゾッとする程官能的だった。
一体どんな表情をしているのか、うつ伏せの僕は姉さんの顔が見る事ができなかった。
右の太ももにピタリ、と姉さんの右手張り付く。
左の太もも同様に。
相変わらず姉さんの手は氷のように冷たく、僕はピクリと背中を振るわせた。
「わたしの俊……わたしだけの俊……」
お尻にベチョリとした何かが触れた。ウネウネと蠢く何かが僕の尻の撫で回す。
先程背筋を走ったものとは違う悪寒が走った。いつも姉さんのリードだったが、こんな 事今までは無かった。
「わたしだけの俊……もう誰にも渡さない……」
ウネウネとした何かはまるで触手のように、生きた不気味さがある。姉さんは一体何を 持っているのか。いや、それ以前に姉さんの両手は僕を捕まえている。
僕が無理に振り返ろうと力を入れた瞬間、ノックの音が部屋に響いた。
不味い、母さんだ。ギクリと心臓が跳ねた。
「俊~ちょっと五月蝿い。姉ちゃんもう寝るから静かにしてね~」
ゾゾゾ、と背筋の中を悪寒が走りぬけた。
叫んで、振り返ろうとしても後ろからガッチリと押さえつけられ全く身動きが取れない。
それはとても女性には、いや人には不可能な力だった。
「ンンンーンンーッ!」
微力な、到底扉の向こうには届かない悲鳴と、鼻息が漏れる。
後ろからした声は、最早姉さんのものでは無く、擦り切れた、早回しのレコードのような、蠢いた触手は、尻を撫で回し、やがて探り当てたかのように。
「大丈夫ヨ、コレハ……夢ナンダカラ」
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