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上り電車を待つ駅のホームに太った男性がいました。
夕焼けに照らされるピカピカのスキンヘッドにじんわりと汗をかき、少し首を傾げながら視線を横に向け、何かを見ながら奇妙な顔でニヤニヤしています。
仕事終わりのサラリーマンや、汚れたユニフォーム姿の学生達。
その男性はピンク一色のTシャツを着ているので、とても目立ちます。
その正面。
下り電車を待つ駅のホームに女子高生がいました。
その女子高生は男性を見つけ、友達にこう言いました。
「見て。またあの人笑ってる。
ホント変だよね」
やって来た電車に視界を遮られ、2人の髪が同じ方向に靡く。
そういうこと言わないの、と友達に叱られ、女子高生は笑いながら電車に乗りました。
次の日もその男性は笑っていました。
その次の日も、またその次の日も。
女子高生はそれをコッソリ見ながら、友達とクスクス笑いました。
やがて、友達と一緒にいない時もその男性を見つけては密かに笑い、女子高生は思いました。
ーー変な人。
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