7人が本棚に入れています
本棚に追加
下り電車を待つ駅のホームに細身の女子高生がいました。
夕焼けに横顔をオレンジに染めながら、正面を見て、ニヤニヤしています。
仕事終わりのサラリーマンや、汚れたユニフォームの学生達。
皆、スマホに目を伏せる中、その女子高生だけは正面を向いて笑っているので、とても目立ちます。
その正面。
上り電車を待つ駅のホームで少年がママと手を繋いでいました。
その少年は女子高生を見つけ、ママを見上げこう言いました。
「ねぇ、ママ。またあのお姉ちゃん笑ってるよ?」
やって来た電車に遮られ、目の前が見えなくなる。
そういうこと言わないの、とママに叱られ、少年は、ごめんなさい、と電車に乗りました。
次の日もその女子高生は笑っていました。
その次の日も、またその次の日も。
少年は毎日、それを見ながら心の中で思いました。
ーー変な人。
ーEND-
最初のコメントを投稿しよう!