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そのどうしようもなく冷たく凍てついた視界に入った途端、呼吸すら儘ならない程、締め付けられる。ぎいぎいと心臓の軋む音が、耳の奥ではっきりと聞こえているんだ。
何度壊れても、あなたに叩き壊されても、諦めの悪いこの心は再生してしまう。あなたの存在している限り、あなたのことが好きで好きで無意識に求めてしまう。
愛されないと分かっているのに、足掻こうとする不出来な失敗作。それが今、此処にいる『北白川美澄』だ。
『私』でも『僕』でも関係ない。この存在自体をあなたが愛することは永久にない、だってコレは只の空蝉。とてもよく似ているけれど、全くの別物。
似ているからこそ、ほんの僅かな違いさえも際立ってしまう。別物なのだと強く主張してしまう。だからこその嫌悪。
似て非なるもの、即ち紛い物。
僕は偽物。決して本物を超えられない宿命を持って、生まれてしまった。
…いっそ似ていなければよかったのに。
全くの別物であったなら、少しは。
あの人も、僕を、見てくれただろうか。
…詮ないことだ。
僕は愛する人に愛されることなく、お飾りの人形として生きていくことがずっと前から決められている。それ以外に生きていく術などないことは分かりきっている。僕があの人に愛される未来など存在しない。
ーーー僕の愛するあの人が愛するのは、
死んでしまった僕の母なのだからーーー
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