憂鬱な朝食

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月兄さまよりもずっと年上に見える、真愛(まさちか)兄さま。だが実際は、今春大学生になったばかりの未成年だ。 しかし、その姿を見た者は一様に息を飲む。その凄絶なまでの色気と美貌に。 抜き身のナイフ、というと陳腐に聞こえるが、まさにその通りの怜悧かつ冷徹な空気をまとい、流す視線ひとつにもゾッとするような色気が漂う。 面差しは雪兄さまと似てはいるが、完全に非なるものだ。型は同じでも、中に籠められた何もかもが異なる。 異質、の一言に尽きる。 同じ血を分けた兄弟の中で、一人だけ。次元の違う異質さをもって生まれてしまった愛兄さまは、心というものを母様の子宮に置き去りにしてきたのだろう。 恐ろしいほどの美貌と、明晰という言葉では片付けられない知性とを引き換えに、心を無くした化け物。 口性ない連中には、そう呼ばれている。 北白川の鬼子。 愛を冠する名を持つ、 愛を知らない化け物。 末弟の四子、北白川 真愛。
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