憂鬱な朝食

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兄さまたちの会話を遠くに聞き流しながら、ただただ食べ物を摂取して消化する。味など分かるはずもない。 時折投げかけられる言葉に笑顔で応えながら、一見穏やかに朝食は進んでいった。 「さてと、では本題に入ろうか」 何の気負いもなく、食後のコーヒーを片手にするりと場を掌握するのは勿論雪兄さまだ。間の取り方が抜群に巧いのは、際立った長所といえるだろう。 ふわふわとしていた空気が、一瞬にして引き締まる。 給仕の使用人たちが吸い込まれるように扉の向こうへと消えていき、残ったのは門倉だけになった。静かに扉が閉まる音を合図に、雪兄さまが一堂をゆっくりと見回した。 「知っての通り、我々は北白川直系の後継者候補だが、それについて春から話がある」 名前を呼ばれた春兄さまは少しためらいながら、口を開いた。 「俺は、お前たちも知ってるようにサポートというか、裏方向きの人間だ。どうも人の上に立つのは性分に合わない。人には向き不向きがあるし、残念ながら俺は…北白川当主の器じゃない」 俯きながら、選ばれ、つむがれる言葉は穏やかだが、破壊力抜群だった。 「俺は雪の下について、雪を支えることを選んだ。ここに、北白川の当主争いからの離脱を宣言する」
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