憂鬱な朝食

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言い切った後の顔は、清々しさに満ち溢れていた。 北白川の家に生まれ、日本有数の財閥の直系男子として生きてきた兄さまたちにとって、当主への道筋を断念する、と決断することは生半なことではない。 自身を支えてきてくれた派閥を裏切り、栄誉を投げ捨てることに等しいからだ。 「父さんには了解を得ている」 雪兄さまが春兄さまを労うように、優しく微笑んだ。 春兄さまは確かに補佐向きで、当主になるには優しすぎることは、誰の目にも明らかだった。決断までの葛藤は想像して余りあるので、もう今は何も言わずに受け入れるのが、兄弟としての正しい姿だろう。 「仕方ないね、こればっかりは。了解!僕に異論はないよ」 少しばかり拗ねた口調の裏には、寂しさと共に、わずかな羨ましさが混在している。 「雪兄につく、ってところが納得いかないけどね!」 憎まれ口を叩きながらも、優しい笑顔で春兄さまを見つめる月兄さまは、世に言うツンデレに違いない。何だかんだで仲がいいのだ、この人たちは。 相続をめぐって骨肉の争い、なんてことにならないのは余裕があるからなのか、育ちのよさなのか、私には分からないけれど。
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