憂鬱な朝食

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雪兄さまは、決して自ら手を挙げるわけではないのに、いつの間にか周囲から持ち上げられ、リーダーにと望まれる。 人望や人徳。そんな曖昧で不確かな言葉で語られるような、安い人では決してない。 幼少の頃から叩き込まれた帝王学は多岐にわたる。 先見性、革新性をもとに周到に組み上げられた緻密な計画は、雪兄さまの得意とするところだ。 内面の底知れなさ、冷徹さは、兄弟随一かもしれない。しかし、それら一切を感じさせない、ただただ人畜無害な青年を完璧に演じられる精神力こそが、彼の突出した才能だと私は思っている。 その手腕は、恐ろしくすらある。 静かな笑みを浮かべながら、強大な帝国を水面下で築き上げる、穏やかなカリスマ。雪兄さまこそ、帝王と呼ぶに相応しい。 だから私は雪兄さまに憧れている。 あんな風に人生を演じきりたい、と 常々願っているから。
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