憂鬱な朝食

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「じゃあ、ライバルの春兄が減ったってことは。あとは雪兄と愛か。分かってたことだけど、あんまり僕に勝ち目はないなあ」 全く残念そうには聞こえない口調で、月兄さまが愚痴るのを、春兄さまが慰めた。 「たとえお前の能力が幾ら高かったとしてもだ、美澄に選ばれなければ意味がないからな」 「全くフォローになってないよ、春兄!だから僕には勝ち目がないって言ってるじゃないか!美澄は昔から雪兄にべったりなんだからさ」 ここで、そんなことはない、と見え透いた嘘をつくことに何の意味があるだろう。私はただ曖昧に微笑む。 私の雪兄さま好きは、本家のみならず社交界でも知らない者がいないほど、周知の事実だからだ。 「あ~あ。僕もさっさと降りちゃおっかなぁ、この不毛な争い…」 今朝の月兄さまはいつになく愚痴っぽい。結局、春兄さまが雪兄さまに付いたことが思いの外ショックだった、ということだろう。ブラコンめ。 「本当にやりたいことがあるならば構わないよ、月。自分で道を選んで、決めて、背負うことが出来るのならば、そうしなさい。 この家くらい、僕が背負ってあげるよ」 なにせ長男だからね、と余裕の笑顔を見せられては、月兄さまとて頷くしかないだろう。もう少し考えてみるよ、と苦笑いで締めくくった。 日本有数の財閥を、不毛だの、こんな家だの、言えてしまう器の大きさは、若いながらもさすがに北白川直系の後継者たちだ。 自分で稼いだわけじゃなし、と言える謙虚さは間違いなく彼らの美徳だろう。
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