戦闘服とローヒール

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スーツは働く男の戦闘服、なんて言い方をよくする。 老若男女の区別なく、剥き出しの自分をさらけださないように、世間や社会に向けて擬態することを武装だというのであれば。 たとえ薄皮一枚の存在であっても、すべからく戦闘服であるといえるだろう。 であるならば。 僕の戦闘服は、このスカートだ。 目が覚めてから、身支度を済ませ、着替えるまでのすべてを。 この部屋で、独りで行う僕にとっては、唯一この部屋だけが心の拠り所であり、砦でもある。 唯一、本当の自分をさらけ出せる場所。 扉を開けて一歩でもここから出てしまえば、完璧な役者であることを要求されている。 どれだけ面倒だろうと、 どれだけ偽りの仮面であろうと、 生きている間は被り続けなければならない。 どんな道化の役であろうと、 演じなければ生きられない。 生きることを許されない。 だから、スカートをはきおえた瞬間から、 心のスイッチを切り替える。 文字通り、心のスイッチを切ってしまうのだ。 そして、役になりきる。 本当の自分を守るために、まとう鎧。 それが、僕にとってのスカートだ。
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