憂鬱な朝食

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「愛も、重荷だというのなら、いつでもそう言いなさい。お前の才能をこんな財閥の経営ごときで独占しては、持ち腐れもいいところだ。世のためでも、人のためでもなく、自分のために、好きに生きるといい」 何の他意もなく、心底そう思っていることがよく分かる、あたたかい言葉を贈ってくれた雪兄さまに、少しは感謝でもしているのか。 珍しく、愛兄さまはしっかりと雪兄さまを見つめ返すと、瞬きをひとつ返した。頬を軽く緩ませながら。 愛兄さまが、笑った。 誰もがそっと息を飲んだ。 呼吸すらためらわれる、 美しい宝石のような笑みを思わず、 閉じ込めてしまいたくなった。 雪兄さまはめったにない出来事に軽く目を見張ると、その笑みを深めて、軽く頷いた。 言葉にしなくても伝わることが確かにあるのだろう、家族ならば。
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