憂鬱な朝食

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「それにしても、美澄に伴侶として選ばれなければ当主にはなれない、なんて前時代的もいいとこだよな」 せっかくの柔らかな時間をいきなりぶち壊す、相変わらずの空気の読めなさはいっそ見事なくらいだが、春兄さまのその意見には全面的に賛成する。 「美澄はもう妹だからさ。もはや妹にしか思えないからさ、今更恋愛がどうのこうのって無理すぎ。もう家族愛?人類皆兄弟的な?それ狙いでいくしかないよね」 月兄さまの意見も正しい。これまで兄弟として育てられてきて、さあこれからは夫として生きていく伴侶を選べ、と言われても正直難しい。こんな可笑しな条件をつけるのならば、離れて暮らしていればよかったのだ。 初対面のインスピレーションで選ぶ方が、まだマシだった。 「美澄が抑制してる間」 「月」 ぺろりと本音を吐き出しそうになった月兄さまの軽率さを、絶対零度の硬さで雪兄さまが遮った。場の空気が一瞬で凍る。 「…ごめんなさい」 萎れた声で謝る月兄さまに、そっと声をかけた。 「月兄さま、気にしてませんから」 だが、雪兄さまの冷たさは融けることがなかった。氷の切っ先を喉元に突きつけられ、漂う冷気に凍りつきそうになる。 「気をつけなさい、月」 その刃は私にも向けられた。 「そして、美澄も。そろそろ限界が来るはず。決して漏らすわけにはいかないのだから、心しておきなさい。 我々の人生を賭して、 美澄の秘密は守らねばならないのだから」
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