戦闘服とローヒール

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いつもと同じ朝。 毎日同じ時間に目を覚まし、毎日同じローテーションで身支度を済ませる。 顔を洗い、トイレを済ませ、歯を磨き、髪をとかす。真っ直ぐに伸びた漆黒の髪は、腰に届こうかという長さで、手入れをするのが面倒で仕方ない。 いつか衝動的に短く切り落としてしまいそうで、洗面所にはあえて鋏を持ち込まないようにしている。 自分で結ぶのは億劫なので、おろすだけにしている。気が向けば、誰かが結んでくれるだろう。 クローゼットを開けると、まるで花畑だ。色鮮やかな可愛らしい服が咲き乱れ、ふわふわと舞い踊っている。女の子らしい、という言葉がぴったりの、少女趣味。 ーーー目眩がする。 だが、他に着る服もない。 どれでもいいのだ。どれだって同じ。 着せ替え人形になったと思って、完璧な少女を演じるまでだ。 襟と手首にシフォンのフリルが幾重にもついた、柔らかな白いブラウス。コルセットのついた、ミントと白のストライプ地のフレアスカート。 白いハイソックスにもご丁寧に、フリルとリボンがついている。 そしてラウンドトゥの黒いエナメルシューズ。ヒールは奥ゆかしい3㎝。文句のつけようがないほど少女らしいコーディネート。 鏡に写るのは、僕じゃない。 これは、僕じゃない。 そう言い聞かせながら、膨らみのかけらもない胸に、真っ白なブラジャーを装着する。これは、装着としか言いようがない。 だって、包み込むものなど何もないのに。 もっと酷いのは、下の方だ。 小さな布に、隠しきれない膨らみを押し込む時、無意識のうちに片頬が歪む。皮肉げに笑おうとして、いつも失敗するからだ。 はみ出した己の性を視認する度に、胃の奥がチリチリとする。 ひどく滑稽で、 ひどく惨め。 これが僕の毎朝のローテーションだ。
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