1352人が本棚に入れています
本棚に追加
いつもと同じ朝。
毎日同じ時間に目を覚まし、毎日同じローテーションで身支度を済ませる。
顔を洗い、トイレを済ませ、歯を磨き、髪をとかす。真っ直ぐに伸びた漆黒の髪は、腰に届こうかという長さで、手入れをするのが面倒で仕方ない。
いつか衝動的に短く切り落としてしまいそうで、洗面所にはあえて鋏を持ち込まないようにしている。
自分で結ぶのは億劫なので、おろすだけにしている。気が向けば、誰かが結んでくれるだろう。
クローゼットを開けると、まるで花畑だ。色鮮やかな可愛らしい服が咲き乱れ、ふわふわと舞い踊っている。女の子らしい、という言葉がぴったりの、少女趣味。
ーーー目眩がする。
だが、他に着る服もない。
どれでもいいのだ。どれだって同じ。
着せ替え人形になったと思って、完璧な少女を演じるまでだ。
襟と手首にシフォンのフリルが幾重にもついた、柔らかな白いブラウス。コルセットのついた、ミントと白のストライプ地のフレアスカート。
白いハイソックスにもご丁寧に、フリルとリボンがついている。
そしてラウンドトゥの黒いエナメルシューズ。ヒールは奥ゆかしい3㎝。文句のつけようがないほど少女らしいコーディネート。
鏡に写るのは、僕じゃない。
これは、僕じゃない。
そう言い聞かせながら、膨らみのかけらもない胸に、真っ白なブラジャーを装着する。これは、装着としか言いようがない。
だって、包み込むものなど何もないのに。
もっと酷いのは、下の方だ。
小さな布に、隠しきれない膨らみを押し込む時、無意識のうちに片頬が歪む。皮肉げに笑おうとして、いつも失敗するからだ。
はみ出した己の性を視認する度に、胃の奥がチリチリとする。
ひどく滑稽で、
ひどく惨め。
これが僕の毎朝のローテーションだ。
最初のコメントを投稿しよう!