掌に残るもの

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『もう、いいよ。アンタが僕ってことで。 なんだかんだ好き自由やったしさ、ほんのちょっとだけど、まあそこそこ楽しかったよ。贅沢も出来たし、気持ちいいこともしたし、 僕を、見てくれたヤツもいたし、ね。 だから、アンタでもいいよ。アナタに、返してあげる。 そのかわり!』 キッと至近距離で睨みつけながら顔が近付いたと思ったら、頭蓋骨が衝撃に揺れた。 渾身の力で頭突きされた。…脳が揺れたわ。 『あいつ!ボク、あいつキラいだけど!ボクを犠牲にするからには絶対に! ーーー幸せにならなきゃブッ飛ばす! 化けて出る!また乗っ取ってやる!絶対許さないからな!そんでまた無茶苦茶ヤリまくってやるからな!いいね!絶対だからな!」 …何この無尽蔵に可愛いツンデレキャラは。そういう子だったっけか、と首を捻りながらお返しとばかりに渾身の力でぎゅうっと抱き締めた。このまま抱き潰してやろうか。 『笑ってんな!バカぁ!』 「あはは、ごめんって。ごめん」 じわっと心に温かな水が流れていく。新しい風が吹いてくる。 それは始まっていく予感。 同じ顔で、ふたつの心で、でもやっぱりひとつの存在なボクたち。 生まれ変われる気がしてる。どちらかを犠牲にしてるワケじゃない。 何も捨てない、何も欠けるところがない、何もかもひっくるめて抱き締めて生きていく。 それが、ボクたちの道になる。
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