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「取り急ぎ、美澄お嬢様をシェルターにお連れしましょう。お嬢様、この門倉におつかまりいただけますか」
門倉が私の手をとって立ち上がろうとした時、
「ーーー僕が運ぶ」
小さな呟きとともに身体が浮いた。
「っち、愛兄さまっ!結構です!自分で歩きますからっ!」
慌てて降りようと身動ぎする身体をぐっと両腕で押さえ込むと、愛兄さまはスタスタと歩き出した。
「っ、いやですっ…おろしてぇっ」
力の入らない弛緩した身体を揺すって抵抗するも、全く聞き入れてもらえないまま、どんどんと進んでいく天井を仰いだ。
「…うぅぅっ…放っといてよ…」
泣きながら小さく吐き捨てた痛みすら黙殺されて、絶望がじわじわと胸の奥から沁み出してくる。
ーーー好きじゃないなら、
愛せないのなら、
優しくしないで。
その優しさに浅ましくも期待してしまう、触れているだけで歓喜してしまう、私の心が、全身が、
あなたを好きだと叫んでいるのに。
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