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『昨日の午後十二時半頃、東京都港区内の一般宅、5件が強盗被害にあいました。
被害総額は百五十万円にも上るとのことです。被害者は……』
「泥棒とは趣味が悪すぎるわ。しかも、強盗だなんて趣味が悪いのにもほどがあるわね。この頃の泥棒は盗人の誇りも忘れたのかしら」
そう呟くのは二十四歳にして現役の怪盗エレノオーレだ。エレノオーレは現在忘れられつつある怪盗の美学とユーモアを持ち合わせる誇り高き怪盗だ。
「警察も何をしているのかしら。うっとおしいコバエなんてさっさと捕まえちゃえばいいのに」
コバエ呼ばわりされるなんて泥棒も面子が立たない。だが、そう呼んだのは何を隠そう宇宙一の大怪盗、エレノオーレだ。泥棒だって何も言えまい。(まあ、宇宙一の大怪盗からこんなことを言われているなんて泥棒は夢にも思わないだろうが……。)
「今は来週の仕事に集中しましょ。来週は国立古代美術館に展示される古代エジプトの秘宝、エメリシアをいただきに行くんだからこんなことに気をとられている場合じゃないわ。よしっ!」
エレノオーレは自分の白く美しい頬を平手で叩き、喝をいれた。
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