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一方、その上空ではエメリシアを手にエレノオーレが一人贅沢な悩みを呟いていた。
「―――Bis(ビス) morgen(モルゲン)!」
「おい。待て。逃がすなーー」
「今回は私のためにこんなに大勢の観衆が集まってくれたわ。人気者は大変ね~。ホホホホホ。
さて、これからどうしようかしら」
大勢の観衆(警官たち)が今回こそは逮捕しようと必死になっている前で自慢の気球船に乗り込み華麗に銃弾をかわし大空へと飛び立ったエレノオーレだったが仕事が終わり、やることもなく退屈していた。
「お腹空いたー!仕事終わりの打ち上げと言ったらやっぱりお蕎麦よね~。草花町の「染の屋」さんに行こうかしら。あそこは麺つゆに良いだしを使っているのよね。そうと決まったら出発よ」
エレノオーレは気球船の進路を東へ向けた。
○●○●○
「あ~ 仕事の後の酒はしみるなぁ~」
「染の屋」で蕎麦を啜り、大ジョッキでビールを流し込むという定番のコースでくつろいでいた吉田は何気なく店のテレビが映し出すニュース番組を見やった。
『速報です。先ほど、港区の国立古代美術館で特別展示されていた古代エジプトの宝石、エメリシアが盗難被害に遭いました。警察は、二週間前に今世間を騒がす大怪盗、エレノオーレから犯行予告があったためエレノオーレの犯行とみて捜査を進めているそうです。また、ちょうどその頃、国立古代美術館から約五百メートルほど離れた一般人宅が強盗被害に遭いました。警察は「港区連続強盗事件」と同一犯とみて捜査を進めているそうです』
「本当にエレノオーレの仕業だったのか。それにしても「港区連続強盗事件」なんて洒落た名前を付けてくれたじゃないか。こっちもやりがいがあるってもんだぜ」
吉田がそう言うと端正な彫りの深い顔立ちの美女がやってきた。見たところ、日本人ではないようだ。その美女は空いている席には座らず奥の席に座っていた吉田に向かって歩いてくると、流暢な日本語で吉田に話しかけた。
「あら、そうかしら。私にはとても野蛮な名前に聞こえるけど」
「誰だいお前は。俺の知り合いにはこんな美女いないぜ。なんなら今から名刺交換でもするかい?」
そう吉田がいうと謎の美女は露骨に顔をしかめた。
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