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「私、あなたみたいな盗人の誇りも忘れた強盗犯と知り合いになりたくなんかないわ」
吉田は驚いて声を上げた。
「な、なんで俺が強盗犯だって知ってるんだ。誰から聞いた」
「そんなに驚くことはないわ。少しあれば調べられることよ」
「驚くことはないったって……」
「私は宇宙一の大怪盗、エレノオーレよ。当然知っているでしょうね」
「エレノオーレって俺が二十万ぽっち盗んでいる間にエメリシアを盗んだあのエレノオーレか?」
「そうよ。あなたが二十万ぽっち盗んでいる間にエメリシアを盗んだあのエレノオーレよ。何度言ったらわかるの」
「それより、なんでそんな大怪盗がこんな下町の蕎麦屋に?怪盗って銀座でフランス料理食べてたりするもんじゃないのか?」
「そんなの偏見よ!怪盗だって下町でお蕎麦くらい食べるわよ!」
吉田は思わぬところで宇宙一の大怪盗に合ったのと、その怪盗に意外なこだわりがあったのとで口をポカンと開けて固まった。
「ねえ、あなた私の部下にならない?」
脈拍もなく唐突にそう言われた吉田はだらしなく口を開け「へ?」と間抜けな声を出していたが、エレノオーレは構わず続けた。
「私、鍵を開けるのが苦手なのよ。それで、あなたが鍵を開けるのが得意だと聞いて頼みに来たの。本当はあなたみたいな野蛮な強盗犯を部下にしたくはないのだけれど。仕方がないわ」
「なんで俺なんかを部下にしたいんだよ。確かに俺は鍵を開けるのには自信があるが、別に俺じゃなくたっていいだろ」
吉田は疑問に思ってそう尋ねた。
「まず一つに、あなたは今までに人を殺していないこと。二つ目に、あなたは大学でロボット工学を専攻してトップで卒業したこと。三つ目に独り身だということ。そして四つ目にあなたの腕前ね。一流の怪盗には一流の部下が必要だからね。これでわかったかしら?」
ちっとも分からないという様子で眉を潜める吉田にエレノオーレは
「私もお蕎麦を食べたいから少しずれてちょうだい。食べ終わったら早速気球船に戻って次の仕事の計画を立てるわよ」
と言って蕎麦を啜り始めた。
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