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中学校の校門から出たと同時に、松尾(まつお)はスマホを取り出した。
自転車にまたがり悠然と通学路を走りつつ、意識はツイッターの画面を追う。毎日のタイムライン巡回は彼の日課を通り越して『癖』だった。
「まーたコイツ、アホなこと言ってら」
今日の昼頃に『不適切発言』のツイートで炎上したタレント(それまで松尾はそいつの名前すら知らなかった)のホームを開くと、アンチにみっともなく反論している。元は自分が悪いのに、ネット民を論破しようと必死だ。
(スクショとって晒そっと)
そのタレントが反論ツイートを消した時のために、発言を画像として保存した。無かったことなんかにさせるもんか。一度出た発言、やらかした行動は決して取り消せないんだから。
ついでに自身の「このオッサンいい加減にしろww」というつぶやきも添える。
ひとつの正義を執行したかのような心地だ。気持ちよかった。向かい風に吹かれていると、さっそく通知が来た。――が。
『FF外から失礼します。
やめた方がいいですよ』
リツイートの通知に混ざって、そんなリプライが来た。
「FF外からー」とは「あなたとは繋がっていない通りすがりですが、あなたに意見します」の意が込められた定型句だ。要はおせっかいである。
何だよコイツ。松尾は無視した。
続いて他の、炎上中の芸人のホーム画面に行った。同様に火種になりそうなツイートを保存して、「もうコイツ死ねよww」の言葉と共に全世界に発信する。
すると、
『FF外から失礼します。
やめた方がいいですよ』
そんなリプライが、また。
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