〈#イイネ〉

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 ……そこまで話し終えたところで、ナルミの母親が、口角を上げて首を傾げた。その表情は歪んだうすら笑いにも見え、あの夜のナルミを思わせた。 「どういうことなの……?」 「……」  リオは無言で、母親にナルミのインスタグラムのホーム画面を見せた。  ナルミの最後の投稿にはーー間近に迫る人ならざるもの、まっくらな中にぎょろりと光る二対の眼、そして振り下ろされる斧が映っていた。  間違いなく、栗須湖に棲まう〈怪物〉の写真だ。そしてナルミはその餌食に……。 「ナルミは、イイネのために……その〈怪物〉の元に戻ったってこと……!?」  信じられない、理解できない、と母親はかぶりを振って何度も繰り返した。  悲嘆に喘ぐ母親を見ながら、リオは思った。 (……でもね、おばさん。ナルミはきっと満足してると思うよ)  その投稿には『イイネ!』の文字の横に、ハートマークと『37412件』という数字が付けられていた。
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