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「そういえば、さ……」
しゃがみこんで木琴を下から覗いていた柳川さんが振り向く。今一瞬、木琴の一番長い金属筒に頭をぶつけたように見えたことには言及を控える。
「クラスのほうはどうなってたの。柳川さん、わたしより後に来たんでしょ。自由解散とは言え、わたしが戻ってないことについて誰かなにか言ってた?」
また一瞬、柳川さんの顔が不思議に歪んだ気がした。まるで喉を詰まらせる蛇のように、見えない狐に怯える翼の折れた小鳥のように。薄暗い夕暮れの中では、それ以上のことは想像でしか、虚しい空想でしかないけれど。錆びついた四分音符を吐き出すようにして、柳川さんは震える唇をこじ開けた。
「……みんなは、あの後も練習してたよ。でも、もうほとんどの人が帰り支度を始めてて。わたしが離れる時はもうほとんどがいなくなってた。残ってたのは斉藤さんと奈良さんと風見くん、諏訪くんくらいかな」
「なるほどね。その四人なら、自分が帰る前にクラスメイトが帰ってこないことに気づくかもしれないね」
「……それはどうだか。そもそもその四人の中の誰かが鍵をかけたのかも。ここを使えるのはうちのクラスだけだし。いやもしかしたら四人全員グルなのかも……」
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