うぜえ文化祭

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「ああ、もちろん。さあ、君はどうする?」 女は刺してみろと言わんばかりの目で俺を見てくる。こいつ。 「答えはこうだ」 俺は、ナイフを振りかぶって女に向かって勢いよく振り下ろした。 答えは、簡単だ。 女の足元に散らばってる段ボールゴミをナイフで切り刻んでいく。当然だ。 「段ボールゴミはでけえからな。小さく切り刻んでおかねーと幅とって邪魔でしょうがねえ」 「正解だ。さすがだな」 女は今日一番の微笑みを見せた。窓の外からの夕陽が女の顔に当たって、表情が余計に明るく見える。クソが。 「ボーナス問題だ。私が左手に握りしめているこの紙くずが分かるか?」 このクソ女がよ。こんなゴミだらけの部屋で、そんな紙くず見せられて、俺がどんな顔すると思ってんだよ。 「クソが!ただの紙くずだろうがよ!俺がてめえにくれてやったゴミだろうがよ!」 「正解だ。さらにボーナス問題だ。この紙くずをもらって私はどう感じたと思う?」 段ボールを切り刻みながら、俺は女から目をそらした。俺ははっきり言って無視したかった。 「君は知らないだろう。私がどれだけ嬉しかったか」 俺は、背中向けながら段ボール切り刻んでどんどんゴミ袋に入れていった。 「君は知らないだろう。君が私のことを見ていたように、私も君を見ていたことを」 「知らねーよ。ゴミ捨ての邪魔すんなよ」 「私は知っている。君が、教室で常に浮いていた私に積極的に話しかけてくれていたことを。君が不満そうな顔をしつつも、学校が好きなことも」 俺は、女に背を向けて、教室中のゴミをゴミ袋につめていく。 「君は去年も文化祭前日からゴミ袋を持って、校舎を歩き回っていたよな。足早に歩いて、そこら中に散らばっているゴミをテキパキとゴミ袋に入れていた。それを文化祭期間中ずっとやっていた。今年も、きっとゴミ袋を持って文化祭前日にやってくると思ったよ。君は気付いていないだろう。でも誰かが見ているんだ、良い行いというのは」
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