プロローグ

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世界は刺激を手に入れた。人々は発狂した。 全ては世界の歯車を噛み合わせる為__つまらない世界に刺激を与える為のソースでしか無かった筈なのに。 ヒーローとヒールの育成はとても簡単な事だった。 何故なら、戦乱期があったからだ。 人は戦い方を知っていた。直に戦っていなくても、体は覚えていたのだ。 更に、ヒーローを際立てる為に、ヒロインやお供となる仲間達まで育成を始めた。 ヒールはボス、幹部、手下などとピラミッド型のような縦社会へと変貌した。 こうして着実にヒーロー対ヒールの抗争は造られていった。 偽装結婚ならぬ偽装抗争の誕生である。 世界はこれを全面的に肯定し、人々はそれを鵜呑みにした。それが正しいのだと納得した。 何せ、世界に正しい方針など無いのだから。 異議を唱える者はいなかった。ただ、受け入れた。 そして彼等は__熱狂した。 要はスポーツ観戦と同じ理屈だ。必死に戦うヒーロー、はたまたヒールを応援し始めた。 そして遂に、ヒーローやヒールは職業となった。お金が貰えるようになったのだ。 勿論、戦うヒーローやヒールに対し、国から補助金は存在したが、微々たるものだった。 だから最初はヒーローやヒールは定着しなかった。 けれど、人々の熱烈な支持を受け、それは公務員という形で職業となった。 これを世間では"配役"と呼ぶ。 そして、配役という職業は爆発的に増え始めた。 右肩上がり__滑り台も驚いて滑ってしまう程だ。 こうして世間に配役という職業は定着し、現代では、配役を育成する学校が存在している。 そして、今から始まる物語は、その学校に入学する一人の少年の物語である。
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