4 僕と知らない人

25/25
347人が本棚に入れています
本棚に追加
/541ページ
――熱が出ると、疲れると……不安が増えると変な夢をやっぱり見る。 だけどそれもやっぱり、夢か現実かわからない…… こないだの、続き……? (――尚、どうして隠れてなかったの!!) (だって……誰か来てたんでしょ……?) (あんたには関係ない人なの!!) (……ママ、怖い) (あんたのせいであんたのことがバレちゃうじゃない! ママの邪魔しないで!) (……うっ、うぅ……ごめんなさい……) (泣かれると余計迷惑なのよ、やっぱりあんたなんて産まなきゃ良かった) (……やだ、ママ、行かないで、僕を置いてかないで……) (……お兄ちゃんみたいにあんたもいい子にしてなきゃ捨てちゃうわよ) (やだぁ……捨てないで……) ――はっ…… ……お兄……ちゃん……? 「……尚くん? 大丈夫? すごいうなされてたみたいだけど……」 「……っはぁ……はぁ」 「氷枕持ってくるね」 「……置いて……行かないで……」 「!」 ハッとして起きると、ぼんやりした意識の中に梨世ちゃんが見える。 でも、どこかへ行こうとしている……。 やだ、やだ……どこにも行かないで。 僕を置いて行かないで……。 「……私はどこも行かないよ、じゃあ尚くんが寝るまで手を握っててあげるから、そしたら大丈夫でしょ?」 「……うん」 かすかに聞こえた『お兄ちゃん』なんて……僕は知らない。 やっぱり、夢で良かった。 僕には兄弟なんていないから、僕の知らない人が夢に紛れていただけなんだ。 不思議なことも、あるよね。
/541ページ

最初のコメントを投稿しよう!